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【毎月連載】 オーディオ・ビジュアルファンのためのエンターテインメントコラム
【毎月連載】 オーディオ・ビジュアルファンのためのエンターテインメントコラム
毎月連載のPhile-web特別企画「Sound Adventure(サウンド・アドベンチャー)」では、オーディオ・ビジュアルエンターテインメントの最前線で活躍される評論家の方々を「ナビゲーター」に迎え、いま最も注目を浴びるデジタルエンターテインメントのスタイルを徹底探求します。最新オーディオ・ビジュアル製品のレビューやハンドリングレポートも毎回紹介して行きます。
【毎月連載】 オーディオ・ビジュアルファンのためのエンターテインメントコラム

近年静かにブームを呼んでいる真空管アンプ。艶と温かみのある音が魅力の真空管アンプを、ボーズの最新スピーカー「77WER」と組み合わせた。スマートなシステムが奏でる本格的なピュアオーディオ・サウンドを、オーディオ評論家の岩井 喬氏がレポートする。

ここ数年、静かな動きではあるが、真空管アンプ人気が高まっている。中国や旧共産圏で生産される真空管の質もどんどん向上し、アンプ設計しやすくなったことも要因にあるだろうが、真空管方式の機器だけ集めてみても内外合わせて相当な数になることだろう。

ではその真空管はどこに良さがあるのだろうか。これまで何度も取り上げられる話題だとは思うが今一度軽く振り返ってみたい。

駆動中は柔らかいオレンジ色に光る真空管。この光も真空管アンプの魅力のひとつだ(写真は拡大します)

半導体では出せない温かみのある音、豊かで潤いのあるサウンドが一般的な真空管サウンドの特徴といわれている。真空管という素子自体は、トランジスターやMOS-FETといった半導体素子と構造こそ違えど、動作目的の部分として“信号を増幅する”という役割は同じだ。詳細は省くが、真空管の内部に設けられたプレート、グリッド、カソードという3つの基本的な電極に対し、高電圧をかけることによって活性化した熱電子の動きを制御することによって効率よく増幅させる素子なのだが、この3つの電極で構成された真空管を3極管と呼んでいる。これに対し、より電子の動きを加速化させて3極管よりも高い電圧変化を起こさせるために、グリッドをコントロール・スクリーン・サプレッサーという3つの電極に分けて構成したものを5極管と呼んでいる。同じ電圧をかけるなら効率的にも優れた5極管を出力段に用いる方が容易に大きな出力が取れるが、音の素直さは3極管の方が優れるといった特色を持っている。

この真空管をアンプに用いる場合、半導体アンプとは違って200V〜500Vという高電圧をかける回路となるが、基本回路構成がシンプルなため、圧倒的に部品点数が少ないというメリットがある。その分部品一つ一つのグレードが重要にはなるが、クリアで鮮度の良いサウンドが楽しめるのは真空管方式ならではのものだ。

BOSEよりこの秋登場するスリムなペンシルスタイル・スピーカー「77WER」は、従来モデルである「55WER」から、よりピュアオーディオとして使えるよう方向性を絞り込んで開発されたものとなっている。

今回はこの「77WER」と真空管アンプを組み合わせ、最新スピーカーによって管球サウンドがどのように展開されるか試聴してみたい。

今回試聴したシステム
BOSE 
スピーカーシステム

77WER(ブラック)
77WER-S(シルバー)
¥126,000(税込)

>>ボーズの製品紹介ページ
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中高音域を受け持つ防磁型57mm口径の“ツィドラー”を1基と、防磁型の70mmウーファーを4基搭載する。また、独自の低音再生技術“アドバンスド・ウェーブガイド・テクノロジー”を採用。本体内部に合計3.6mに及ぶ3本の管(ウェーブガイド)を設け、側面とスピーカー脚部に音の出口となるポートを配している。この構造により、スリムな筐体にして広い帯域の低音再生を実現している。
LUXMAN
真空管プリメインアンプ

SQ-N100
¥189,000(税込)

>>ラックスマンの製品紹介ページ
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LUXMAN
CDプレーヤー

D-N100
¥126,000(税込)

>>ラックスマンの製品紹介ページ
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「77WER」ではユニットが新設計となり、中高域を担うネオジウムマグネット搭載57mm“ツィドラー”(「トゥイータードライバー」の略語)ユニットと、剛性を高めたキャビネット内に搭載されている内磁型反発マグネット方式による70mmウーファー×4発という構成となっており、ともにロングボイスコイル構造として、より高い耐入力と能率のアップを実現させている。また外観上は1本のフルレンジだけが見えるというスタイルだが、“アドバンスド・ウェーブガイド・テクノロジー”という最新技術を搭載。キャビネット内部に、共振点が最適化される位置を割り出し搭載された4本のウーファーから導かれる、合計3.6mもの距離を持つ3本の管(ウェーブガイド)により、サイズを越えた豊かな低域再生を可能としている。またこの構造はバンドパスフィルターの役目も果たしており、スリムでバッフル面の反射を抑えた構造も相まって、定位感も保ちながら広い音場が自然に展開され、開放的なサウンドが楽しめるようになったという。


今回試聴を行ったシステム(写真は拡大します) 防磁型57mm口径の“ツィドラー”ユニット(写真は拡大します)

本体側部の“アドバンスド・ウェーブガイド・テクノロジー”のポート(写真は拡大します) “アドバンスド・ウェーブガイド・テクノロジー”のポート。合計3.6mに及ぶ3本の管というアコースティックなフィルターを通すことにより、点音源化も実現している(写真は拡大します)

「77WER」とペアリングさせる真空管アンプは、A4サイズという小型サイズながらプリメインアンプとしての機能性を十二分に盛り込んだラックスマン「SQ-N100」。「SQ-N100」はMT・5極管の名球6BQ5(欧州名:EL84)をプッシュプル方式・UL接続で用いたアンプであり、「77WER」のインピーダンス6Ωで接続した場合の定格出力は12W×2と、価格的に見ても手頃な組み合わせである。CDプレーヤーには、同シリーズとしてラインナップされている「D-N100」を使用した。この2点はデザインのマッチングとしても「77WER」のスマートでシンプルな風貌にぴったりはまってくれる。


今回の試聴は、『XTC』や『MENIKETTI』といったギターサウンドがメインともいえるロックバンドの音源を中心にしてみた。

『XTC』では「77WER」のサイズを軽く上回る量感溢れる低音再生能力によってベースのふくよかな響きを余すことなく再生。ボーカルやクリーンギターのニュアンス、弦のタッチに関しても、フルレンジのように明確な中高域を再生する“ツィドラー”(「トゥイータードライバー」を略した造語)ユニットによって、各々が低音に負けることなく粒立ち良く映えて聴こえてくる。この辺りは管球アンプの倍音成分のノリの良さが生きているのだろう。量感だけでなく制動力も十分なスピーカーという印象で、リズムも適度に締めてくれるため、ロックのドライブ力が削がれるといったことはない。シンプルなソースなので音場の状況が良く分かるのだが、スマートなスピーカーの存在からは考えられないほど左右に空間が拡がっている。しかしながらセンター定位のボーカルはきちんと中央で線を結び、音がぼやけるといったことは全く起こらなかった。

続いて『MENIKETTI』を聴いてみた。こちらはアナログ16chレコーダーでベーストラックを収録したというソフトなのだが、レスポールによる深みのある歪みが魅力のリードギターと、アナログならではの押し出し感があるドラムとベースを組み合わせたブルージーなロック盤である。こちらに至っても重厚なアナログ録音の良さを遺憾なく発揮し、リッチな中低域を空間いっぱいに再生してくれた。

77WERと真空管アンプというシステムによるサウンドは非常に開放感に溢れ、管球独特の、中高域が拡散してきらめく華やかな傾向を聴かせる。何よりアンプを通したレスポールのディストーションサウンドの心地良いハーモニーは素晴らしく、非常にはまってしまった。ギターサウンドはもとより、バイオリンなどの弦モノを再生する場合においても、真空管の倍音成分の伸びやかさは有効に作用し、非常に艶のあるウェットなサウンドを届けてくれることだろう。当初は、出力も小さいアンプなので、押し出し感まで十分に出てくる再生音はそれほど期待していなかったのだが、想像以上に鳴りっぷりが良く、落ち着きも兼ね備えたオールマイティな音楽再生装置であることが分かった。

【コラム】真空管アンプとは?

一般的に真空管アンプはシングル方式とプッシュプル方式に大別される。シングル方式は出力管をchあたり1本用いて増幅を行い、プッシュプルはchあたり2本、若しくは4本のペアリングを組んで増幅しているものだ。端的にいって出力を大きく取れるのはプッシュプル方式であり、出力は小さいもののサウンドの質感を重視したいのであればシングル方式に軍配が上がる。

出力の小さい真空管アンプを用いる時に問題になるのはスピーカーの能率(出力音圧レベル)である。シングルアンプを用いるのであればせめて能率が90dB以上のスピーカーを使いたい。まったく鳴らないということではないが、反応も鈍く、もの足りない音になってしまう。例えばフルレンジ1発でスピーカーを自作するとして、大抵フルレンジユニットは1本で使う場合90〜100dBほど能率は確保できる。そういったシンプルなシステムで楽しむ管球サウンドも鮮度が高くまた魅力的でもある。

回路上高電圧をかけねばならない真空管アンプは扱いが難しいと思われるかもしれない。しかし既製品として販売されているものであればプロテクト回路も搭載され、熱に対する配慮と頻繁に電源を入/切しないよう気をつけていれば(真空管保護の観点からいえば一回電源を投入したならば2時間は入り切りを行わない方が良いだろう)、通常のオーディオ機器となんら変わらない使い勝手で楽しめるはずだ。真空管の寿命も適正な設計がなされているアンプであれば5年10年は平気で使える。もし心配であれば、スペアの真空管も含め、まとめてアンプ購入時に確保しておくと良いだろう。

評論家プロフィール
岩井喬 Takashi Iwai

1977年・長野県北佐久郡出身。東放学園音響専門学校卒業後、レコーディングスタジオ(アークギャレットスタジオ、サンライズスタジオ)で勤務。その後大手ゲームメーカーでの勤務を経て音響雑誌での執筆を開始。現在でも自主的な録音作業(主にトランスミュージックのマスタリング)に携わる。プロ・民生オーディオ、録音・SR、ゲーム・アニメ製作現場の取材も多数。小学生の頃から始めた電子工作からオーディオへの興味を抱き、管球アンプの自作も始める。
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